3月3日の桃の節句には、雛人形を飾ってお祝いしますよね。その周囲に、天井から飾り物をつるし下げているのを見たことはありませんか?
あれは、つるし雛と言って、桃の節句に飾るものなんです。布でできたお人形や動物など、飾り物が吊るされていて、思わずほっこりしますよね。
そんな「つるし雛」の由来や、お飾りに込められた意味について紹介していきます。
つるし雛の由来は?
つるし雛の始まりは江戸時代!
つるし雛の歴史は、江戸時代までさかのぼります。
当時、桃の節句に雛人形を飾る習慣はすでにありましたが、庶民には手の出せないものでした。そこで、端切れ布で小さな人形を作り、それを近所のみんなで持ち寄って、雛人形の代わりとしたのです。
そうした沢山集まった人形をひもで吊るして飾ったというのが、「つるし雛」の始まりだと言われています。つるし雛は、元々は雛人形のかわりとして飾ったものだったんですが、現在は雛人形と共に飾られるようになっています。
つるし雛の飾り物は、5列11個、計55個の布人形を、円状に吊り下げます。それを2つ用意し、対で飾るのが正式な飾り方ですね。ですが、沢山飾る家庭もありますよ。
つるし雛を飾る風習がある地域は?
伊豆のつるし雛
つるし雛発祥の地は、静岡県伊豆地方、現在の伊豆稲取温泉と言われています。
戦後の一時期、つるし雛を飾る家庭が少なくなり、知る人ぞ知る風習となっていました。しかし現在では、稲取温泉旅館協同組合というところが中心となって保存活動を行なっています。
また、毎年1月から3月にかけて、「雛のつるし飾りまつり」が開催されていて、大勢の観光客を楽しませているんですね。
尚、2023年(令和5年)の「雛のつるし飾りまつり」は、以下の日程で開催されています。
- イベント:第26回 雛のつるし飾りまつり
- 開催日程:2023年1月20日(金)~3月31日(金)
福岡のさげもん
福岡県柳川地方では、「さげもん」とよばれる飾り物を、雛人形とともに飾る風習があります。
伊豆のつるし雛との違いは、
- 鞠の飾り物が多いこと
- その数が7列7個、計49個
であることです。
人生50年、と言われていた時代に、女性は一歩引いて49年としたのが、数の由来と言われています。
山形の傘福
山形県酒田市には「傘福」と呼ばれる飾り物が伝わっています。
つるし雛の「傘福」は、開いた傘の下に布製の縁起物を吊り下げて飾るのが特徴です。
傘福は、桃の節句用ではなく、子供の健やかな成長を願う飾り物。そのため、女の子用だけでなく、男の子用の傘福も作られているんですね。
つるし雛、その飾りに込められた意味は?
つるし雛の飾りには、一つ一つに意味が込められています。
桃・猿・三角袋
つるし雛の飾りで、代表的なものに、桃、猿、三角袋があります。それぞれに、縁起物としての、由来がありますよ。
桃
桃は、古来より邪気を払うとされ、長寿の効果があるとされてきました。また、桃は女性の象徴とされ、安産祈願の願いも込められています。
猿
猿は、「去る」とかけて、厄祓いの効果が込められています。
三角袋
三角袋は、薬袋を表しています。昔の薬は、三角の袋に入れていたのです。病気にならないように、病気と無縁であるようにとの願いが込められてるんですね。
犬・唐辛子・はいはい人形
その他にも、飾りびなには約50種類の布人形が飾られています。
亀、打出の小槌、松といった、おめでたい物もありますし、蝶、梅、椿などの、可愛らしい物も飾られます。
それらにも一つ一つ、意味が込められていますが、変わったものとして、犬、唐辛子、這い子があります。
犬
犬は、犬張子の形で作られ、安産祈願と子宝祈願を願っています。
唐辛子
唐辛子は虫よけ効果から、娘に「悪い虫=悪い男」がつかないように、との願いが込められています。昔は、防虫効果の為に、雛人形も本物の唐辛子を一緒に入れて、保管していたんですよ。
這い子
這い子は、はいはいの形の赤ちゃん人形で、子供の健やかな成長を願っています。
お雛様の横に飾ってあげて
つるし雛の人形の由来をみると、子供の成長を願う親心が、ひしひしと伝わってきます。特に『健やかな成長』を願うものが多く、それだけ子供を大切に思っていたのでしょうね。
雛人形の、美しいお顔やお道具も素晴らしいのですが、つるし雛もほっこりとした可愛さがあります。
可愛いだけでなく温かいと感じるのは、きっと込められた願いが多いからなのでしょう。
雛人形とともにつるし雛も飾り、ぜひ健やかな成長を願ってあげて下さいね。
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