
日本には季節の行事がいくつもありますが、全国的でないものもいくつかあります。地元だとメジャーだったのに、別の地方に引っ越したら誰も知らなかった…なんてことも。
そんな風習や行事の一つに、「亥の子」と「亥の子餅」があります。西日本では亥の子はメジャーな風習なのですが、どんなものなのでしょうか?
そこで、
- 亥の子とは?
- 2023年の亥の子はいつ?
- 亥の子餅を食べる意味や由来
- 亥の子に行われる風習
…について紹介していきますので、ぜひ参考にしてくださいね!
亥の子とは?
旧暦10月の最初の亥の日

亥の子(いのこ)とは、「旧暦10月の最初の亥の日」のこと。またその日に行われる行事のことを指します。
ここで登場する「亥」とは、十二支の12番目である「亥(い)」(いのしし)のこと。十二支は12で一周する数の数え方で、年賀状でおなじみの「年」や日付・時間の数え方でも使われます。
ちなみに「旧暦」とは江戸時代まで使われていた、月の満ち欠けをもとにしたカレンダーのこと。現在は太陽の動きをもとにした暦を使っているため、旧暦と比べると一月ぐらいズレが出てしまいます。
旧暦の10月は十二支に当てはめると亥の月になり、その亥の月の最初の亥の日はその年によって変化します。そのため亥の子は毎年同じ日にならず、その年によって日にちが変化するんですね。
古代中国の亥の子祝いから
古代中国には、「亥の子祝い」という無病息災を願う風習があります。これが日本に伝わって、亥の子の風習になっていきました。
また、亥(イノシシ)は子沢山なので、子孫繁栄を願う風習という部分も。そこから豊作を願う風習として、貴族や武士の間に広まったという説もあるんですね。
亥の子は西日本ではメジャー
亥の子は平安時代に宮中行事として定着し、「源氏物語」にもその様子が描かれているほどです。室町幕府や江戸幕府の年中行事としても、亥の子は行われたという記録が残っています。
一般民衆にも亥の子は広まりましたが、西日本を中心としたものでした。関東より北ではほとんど行われず、そのため知らない人も多いんですね。
2023年の亥の子はいつ?
旧暦10月の最初の亥の日が「亥の子」となりますが、現在の暦とは別のもの。そのため現在の暦に合わせて、一ヶ月遅らせた11月の最初の亥の日を亥の子としています。
2023年(令和5年)11月の最初の亥の日は、11月1日(水)。
なお地域によっては、「10月の最初の亥の日」を亥の子とする地域もあります。
亥の子餅を食べる意味や由来

亥の子では、「亥の子餅」という和菓子を食べる風習があります。亥の子餅は「亥の月、亥の日、亥の刻に穀物を混ぜた餅を食べると病気にならない」という、中国の風習からきたもの。
わかりやすく言うと、「亥の子の日の、亥の刻(午後9時~午後11時)の間」に亥の子餅を食べるんです。
亥の子餅はイノシシに似せたお餅で、表面にイノシシの模様をいれることもあります。その中身も、地方によってお餅だけの場合もありますし、小豆あんを入れたものもあります。またその年に取れた穀物を入れるとして、大豆・小豆・ごま・栗などを入れることもあるんですよ。
亥の子餅は西日本で主に作られ、亥の子の時期に合わせて11月初め頃に店頭に並びます。
□冬の到来を告げるお菓子 亥の子餅
*家でも作ることができるので、試してみたいですね。
亥の子に行われる風習は?
亥の子突きと亥の子歌
亥の子の無病息災を願う行事に、「亥の子突き」と「亥の子歌」があります。これは亥の子の日の夕方~翌朝早朝にかけて、子どもたちが歌を歌いならが各家庭をまわるという風習です。
そのときに「亥の子石」と呼ばれる、荒縄を何本も巻きつけた丸い石を家の軒先で地面に叩きつけるんですね。そのお礼として各家庭では、子どもたちに亥の子餅やお菓子などを渡していたんです。
□吉田町亥の子(亥の子唄 四方の隅に)
*亥の子石を叩きつける様子は、かなりの迫力ですね。
尚、亥の子石以外にも、藁束を強く縛った藁鉄砲(わらでっぽう)を使う地域もあります。この藁鉄砲を使った同様の行事としては、東日本で旧暦10月10日に行われる「十日夜(とおかんや)」があります。
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炉開きとこたつ開き

茶道の世界でお湯を沸かすときは、夏は「風炉(ふうろ・ふろ)」というものを、冬は「囲炉裏(いろり)」を使います。その切り替えが亥の子の日になり、「炉開き(ろびらき)」として亥の子餅を茶菓子として出してお茶を楽しみます。
また一般家庭でも、亥の子からこたつを使い出す風習もありました。「五行」の考え方では、「亥」に水の属性があると考えるからです。そのため亥の子の日から火にまつわるものを使い出すと、火事にならないとしているんです。
昔はこたつの中には、炭をいれた火鉢を置いていました。こたつ布団に火が付けば一大事ですし、火事を防ぎたいというおまじないだったんですね。
亥の子に願いを込めて
亥の子は関東ではあまりなじみがありませんが、西日本ではおなじみの風習です。
その内容は「亥の子餅」を亥の子の日の夜9時過ぎに食べたり、子どもたちが歌を歌って各家庭をまわったりするもの。また茶道では亥の子の日にいろりでお茶をたてて、亥の子餅を食べる風習があるのも素敵ですね。
無病息災を願う亥の子ですが、地域によってあまり知られていないのが不思議なところ。もし11月はじめに西日本方面に遊びに行くときは、お店に「亥の子餅」があるかチェックしてみませんか?
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