
ネット上のニュースなどを読んでいると、「これは書き間違いかな?」と思える言葉に出会いませんか?その時は気が付かずに流し読みたものの、後で「あれ?」と思うこともよくあります。
そういった言葉で気になるのが、「おざなり」と「なおざり」という言葉。
この2つの言葉は似ていますが、決して書き間違いではなく、それぞれ違う意味の言葉なんです。どう違うのでしょうか?
見た目にも紛らわしい「おざなり」と「なおざり」、それぞれの意味や違い・使い分けについてまとめてみました。
おざなりとは?なおざりとは?
「おざなり」とは?
おざなりを漢字で書くと、「御座なり」と書きます。
その語源は、お座敷遊びの「太鼓持ち(幇間)」の隠語と言われています。
太鼓持ちとはお座敷で芸を披露する男性のことで、お客さんの盛り上げ役。よく上司を持ち上げる人のことを「太鼓持ち」と言いますが、その語源はこの太鼓持ちなんですね。
□浅草のたいこもちの芸
https://youtu.be/U1m2ntfedC8
*現在では芸者以上に太鼓持ちの数は減っていて、その芸はとても貴重なものになっています。
しかしお座敷というのは、粋でない人や遊びの流儀をわかってない人には軽視される場所。そんな「相手にしたくない客」に対して、太鼓持ちはわからない程度に適当にあしらいました。
この適当に相手していることについて、隠語で「おざなり」と言ったわけです。そこから転じて、おざなりは「いい加減に物事を行う事」を指す言葉となりました。
「なおざり」とは?
一方のなおざりを漢字で書くことはあまりありませんが、「等閑」という字を当てます。
この文字から見てもわかる通り、なおざりは、おざなりとは別の言葉なんです。語源もおざなりより更に古く、平安時代にすでにあった言葉と言われています。
なおざりの「なお」には「そのまま」という意味が。「ざり」は「さり」という言葉で、「去る」という言葉だったと考えられています。
この「去る」は立ち去るなどの「去る」ではなく、手を付けない・避けると言った意味。
この「なお」と「ざる」の2つの言葉が合わせる事で、「物事をなにもせず放置する」という意味となります。
そこから転じて、「いいかげんなこと、物事をおろそかにすること」となりました。
「おざなり」と「なおざり」の違いや使い分け方
どっちも言われて嬉しくない
- 適当に物事を行う「おざなり」
- 物事を放置してしまう「なおざり」
どちらも適当ですし、マイナスのイメージしか感じられませんね。
事実これらの言葉は褒め事ではなく、対象となる人や物事を否定する言葉です。
もし面と向かって、
- あなたは「おざなり」だ
- あなたは「なおざり」だ
と言われたら、反省する必要がありますね。
やってはいる「おざなり」

とはいえ、言葉の意味を考えると、「おざなり」と「なおざり」では意味合いが違います。
もう一度書きますが、おざなりは「物事を適当に行なっていること」を指します。という事は褒められたものではないですが、「物事を実行」しているんです。
例えば宿題があったとします。しかしあなたは、宿題なんかやりたくありません。そこであなたはスマホやテレビでも見ながら、だらだら宿題を片付けたとしましょう。
親が見たら、きっと片付けなさいと怒られる状態ですね。これが「おざなり」です。
「おざなり」は、次のような使い方をします。
- そんなおざなりなやり方じゃ、いい加減なものしか出来ないよ。
- クレームに対しておざなりな態度されたら、お客様だって腹を立てるに決まってる。
- おざなりに勉強してたけど、テストは一応解けたかな。
やってすらいない「なおざり」
一方のなおざりですが、「いい加減に物事を放置し、おそろかにする」事を言います。
先ほどの宿題を例に出せば、宿題の提出期限が迫っているのに手を付けず放置。あるいは「そのうちやるよ」と言いながら、いつまでたってもやろうとしない状態です。
そんなあなたを見た親は、「いい加減に宿題やりなさい!」と怒るでしょうね。こんなどうしようもない状態が、「なおざり」です。
やらなきゃいけない物事に対して、現実逃避したり口だけでやろうともしない。やっているだけ「なおざり」よりも「おざなり」のほうがまだマシ。
やろうとすらしていない「なおざり」は、おざなり以上に反省しないといけない状態です。
「なおざり」は、次のような使い方をします。
- なおざりにしたって、出来上がらないんだから、そろそろやりなさいよ。
- お客様のクレームをなおざりにした結果、再びお客様からクレームが入ってしまった。
- テスト勉強をなおざりにしたから、テストが全く解けなかったよ。
せめておざなりに、そしてきちんとしよう
人から「おざなり」「なおざり」と指摘された場合、その態度や状況を反省しなければなりません。しかも意味を把握した上で「なおざり」と指摘したのなら、ダメな人と言われたようなもの。
おざなりは一応言われたことをやっていますが、なおざりはやっていません。
とりあえずは「おざなり」でも良いですから、言われたことを実行しましょう。その上でおざなりではなく真面目に取り組んで、きちんと仕上げるようにしたいですね。
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