日常の会話の中で、ちょっとした言い回しを聞くことがよくあります。なんとなく意味はわかるけれど、よく考えると単語の意味がわからない言葉もちらほら。
そんな言葉の一つに、「ピンキリ」という言葉があります。
一番いいモノと一番悪いモノの幅がある、だと思うのですがピンとキリってなんなのでしょう。それにどっちが上なのかも気になりますね。
そんなピンキリの意味と、ピンとキリはどっちが上なのかについてまとめてみました。
ピンキリの意味や由来
正しくは「ピンからキリまで」
ピンキリは省略語で、「ピンからキリまで」というのが正式な言い方。
江戸時代に成立した言葉で、意味は「物事に対して最上から最低まで・最初から最後まで」です。
例としては、
- 和牛と言っても、味も価格もピンキリだから
- 歯医者さんの腕もピンキリだから、評判をきちんと聞いたほうがいいよ
といった、使い方をします。
「和牛」といった実在する物に対して、品質・味・価格など幅が生まれるときによく使います。
あるいは「歯科医の技量」という、目には見えないものに対しても幅があることを指したりも。
褒め言葉と言うよりは、悪いものがあるよと注意を促す使い方が一般的ですね。
ピンはポルトガル語?
ところで「ピンからキリまで」の、ピン・キリとはどういう言葉なのでしょう?
「ピン」は、ポルトガル語が由来という説が最も有力。ポルトガル語の「Pinta(ピンタ)」には、「点・斑点」という意味が。そこからサイコロの1の目を指す、俗語の「ピン」となったと言われています。
そういえば時代劇の丁半ばくちで、「ピンゾロ(1の目が2つ出ること)」と言ってますね。
また室町時代にポルトガルから伝わった、「天正かるた」にもPintaは使われています。天正かるたは札に点数が描かれているもので、どちらかと言えば現在のトランプに近いものです。
ここでも1点札のことをPintaと呼びましたが、1点札は点数としては最低のもの。そこから転じて、小さい・最低なものをピンと称するようになったと言われています。
キリの意味・語源は
一方のキリに関しては、複数の説があります。
区切りがよい説
もともと日本語には、「区切り」という言葉があります。その意味は「次に進まず、その時点でちょうどよく終わることができる状態」といったもの。この「区切り」を省略して「キリ」と言い、転じて終わりや最後を表す言葉となったという説です。
天正かるたの12枚目の札説
天正かるたは、12枚で1組。その12枚目の札のことを、「キリ」と呼んでいました。1枚目(1点札)がピンなので、最初から最後までが「ピンからキリまで」となったという説です。
花札説
花札での絵札は、1月から12月までの光景が描かれているもの。この中で12月の絵札には、「桐に鳳凰」が描かれています。
12月は1年の終わりの月。そこ彼転じて12月=桐(キリ)=最後・おしまい、となりました。ただし花札は天正かるたが伝わった後に誕生したため、説としては弱いものとなっています。
十字架説
ポルトガル語で「cruz(クルツ)」が訛った、という説があります。クルツの意味は十字架で、その形が漢字の「十」に似ていると当時の人は考えました。そこから数字の上で区切りとなる、一(ピンタ)から十(クルツ)までとなったそうです。
キリについては以上のように複数の説がありますが、いずれの説も説得力があるので、どれも正解としたいですね。
ピンとキリはどちらが上でどちらが下?
江戸時代の伝達ミス?
ピンとキリ、それぞれの由来や意味をまとめると次の通りとなります。
- ピン… 最初・最小・最低
- キリ… 最後
ですのでピンとキリはどちらが上かと考えると、ピンが下・キリが上となりますよね?
ところが現在では
- 「ピン」が最上
- 「キリ」が最低
とする言い方が一般的になっています。
逆になってますね。なぜ逆になったかは、言葉が生まれた江戸時代の情報伝達方法が考えられます。
現在ではネットなどで瞬時に情報が広まりますが、江戸時代はゆっくり情報が広がる時代。伝わる方法も会話や物語といったもので、急ぎの情報でなければ本当にのんびり広まります。
おそらくはこの時代で言葉伝える途中で、伝達ミスがあったのでしょう。そのため途中から逆となり、それが広まったまま現代に至った…のが真相のようです。
言葉は時代で変わる?
一般的には「キリ」が下で「ピン」が上、という事になっているピンキリ。しかし語源では逆ですし、あまりどちらが上かを気にしなくても良いのかも。
語源もポルトガル語説が有力ですし、時代を経て言葉が変化していくなんて面白いですね。
ピンキリ以外にも深い意味や由来のある言葉を、日常的に使っているかもしれません。家族や友人の会話にちょっと注目して、ピンキリみたいな言葉を探して見ませんか?
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