夏から秋にかけて毎年日本にやってくる「台風」。非常に強い雨風をもたらしますが、場所によってはタイフーンやハリケーン、サイクロンなど別の名前で呼ばれることもあります。それぞれどんな違いがあるのでしょう?
そこで、
- 台風の語源や名前の由来
- 熱帯低気圧が台風になる条件について
- 台風・タイフーン・ハリケーン・サイクロンの違い
についてそれぞれ紹介していきますので、ぜひ参考にしてくださいね!
台風の語源や名前の由来
語源や名前の由来
台風の語源や名前の由来は諸説ありますが、次の3つの説が知られています。
大風から
中国の広東省・福建省や台湾あたりでは、強い風のことを「大風(たいふん)」とも呼ばれていました。西洋に伝わってから「typhoon(タイフーン)」という言葉に変化。更に再度アジア圏に逆輸入され、「颱風(たいふう)」という漢字が当てられるようになったという説です。
アラビア語から
アラビア語で、嵐を意味するtūfānが、「typhoon(タイフーン)」に変化し、アジア圏では「颱風(たいふう)」になったという説です。
ギリシア神話から
ギリシア神話の風の神(あるいは怪物)である「テュフォン(τυφων、touffon 、typhon)」から、「typhoon(タイフーン)」に変化し、アジア圏では「颱風(たいふう)」になったという説です。
日本では、野分→颶風→颱風→台風
日本では、台風はかつて「野分(のわき、のわけ)」と呼ばれていました。
野分とは、野の草を吹いて分ける様子から、暴風全てを指す言葉。あの「源氏物語」や「枕草子」にも使われていた言葉なんですね。
そして江戸時代には、熱帯低気圧のことを、中国で昔から使われていた「颶風(ぐふう)」と訳した文献(*)も残っています。
*日本初の気象学書「颶風新話」(伊藤慎蔵によるオランダ語訳)より
それから明治時代になると、欧米の影響もあり、タイフーンや大風の言葉も使われるようになっています。
やがて、明治時代末には、中央気象台長(現在の気象庁トップ)になる岡田武松(1874~1956)という方が「颱風 (たいふう)」という言葉を気象に用いるようになり、後に気象用語として定着するようになりました。
*先に出てきた「颶風(ぐふう)」と「颱風 (たいふう)」は似ていますが漢字が違います。
そして戦後、当用漢字が制定された1946年(昭和21年)に、「颱風」から今の「台風」という漢字に変わり、現在まで使われているというわけです。
台風は140個の名称がある
台風が発生すると気象庁により「台風●号」と、その年の1月1日以降に発生した順番で番号が割り振られます。
またそれとは別に、日本を含め世界14カ国が所属する「台風委員会」では、加盟国が提案した、人・動物・植物などの親しみのある名前から、台風の発生順に名前が付けられていきます。
台風の名前は各国10個づつ、計140個の名称が用意されています。年間の台風発生件数を見ていくと、約4~5年ほどで一巡することになりますね。
ちなみに日本が提案している台風の名前も10個あり、いずれも星座に由来するもの。中には「ヤギ」や「ウサギ」や「クジラ」といった名前があります。
熱帯低気圧が台風になる条件は?
ポイントは最大風速17.2m/s以上!
熱帯低気圧が「台風」と呼ばれるには、次の条件を満たす必要があります。
熱帯低気圧は、熱帯~亜熱帯の海上で発生する低気圧ですが、台風と呼ばれるには発生場所が、南シナ海・東シナ海・フィリピン海・日本海周辺であることが必要です。またこの海域に含まれる陸地で発生した場合も、台風となるんです。
風速17.2m/sでは風に向かって歩けず、風にあおられて転ぶ人もいるほどの風速です。実際の台風はもっと風速が強くなるので、とても危険だと言うことがよくわかりますね。よく「熱帯低気圧になれば安全」という人がいますが、風は強いままなので警戒が必要なんですよ。
台風の強さや大きさ
気象庁では、10分間平均の風速をもとに、台風の強さや大きさを表しています。
- 台風の強さは、最大風速
- 台風の大きさは、風速15m/s以上の風が吹く半径
で区分しています。
▼台風の強さの区分け
階級 | 最大風速(m/s) | 最大風速(knot) |
---|---|---|
(表現なし) | 17.2m/s~32.6m/s | 34~64knot |
強い | 32.7m/s~43.7m/s | 64~85knot |
非常に強い | 43.7m/s~54m/s | 85~104knot |
猛烈な | 54m/s以上 | 105knot以上 |
▼台風の大きさの区分け
階級 | 風速15m/s以上の半径 |
---|---|
(表現なし) | 500km未満 |
大型(大きい) | 500km~800km |
超大型(非常に大きい) | 800km以上 |
台風の強さ・大きさは、「大型で非常に強い台風」のように、上記表の「強さ」と「大きさ」を組み合わせて表します。
そのため、例えば
- 台風の大きさが500km未満だが強い台風 → 「強い台風」(大きさの表現なし)
- 台風の強さが32.7m/s未満だが大型の台風 → 「大型の台風」(強さの表現なし)
のように表現します。
台風・タイフーン・ハリケーン・サイクロンの違いは?
タイフーンとは?
タイフーン(Typhoon)は、次の条件を満たした熱帯低気圧を指します。
「風速64knot(33m/s)」という基準は、世界気象機関(WMO)における熱帯低気圧の分類によります。
▼領域(1):北太平洋西部および南シナ海
最大風速(m/s) | 最大風速(knot) | 国際分類の名前 |
---|---|---|
17m/s未満 | 34knot未満 | Tropical Depression |
17~25m/s | 34~48knot | Tropical Storm |
25~33m/s | 48~64knot | Severe Tropical Storm |
33m/s以上 | 64knot以上 | Typhoon(タイフーン) |
台風とタイフーンの違いは、
- 台風…最大風速が34knot(17m/s)以上
- タイフーン…最大風速が64knot(33m/s)以上
と、タイフーンは風がより強いかどうかだけなんですね。
日本の分類における台風は、国際分類にあてはめると「Tropical Storm(トロピカルストーム)」以降になります。タイフーンは、日本の分類にあてはめると、「強い、非常に強い、猛烈な・・」にあたりますね。
ハリケーンとは?
ハリケーン(Hurricane)とは、次の条件を満たした熱帯低気圧(トロピカルサイクロン)を指します。
タイフーンとの違いは発生場所で、カリブ海やメキシコ湾あたりで発生するとハリケーンとなります。ただし海上に区切りはないため、発生後にアジア寄りに移動した場合は、「タイフーン」と名前が変わる事もあります。
世界気象機関(WMO)での基準は次のように分類されます。
▼領域(2):大西洋および北太平洋東部(カリブ海、メキシコ湾を含む)
最大風速(m/s) | 最大風速(knot) | 国際分類の名前 |
---|---|---|
17~33m/s | 34~64knot | Tropical Storm |
33m/s以上 | 64knot以上 | Hurricane(ハリケーン) |
なお、ハリケーンは1分間の最大風速によって、カテゴリー1~5までの5段階で勢力の分類がされています。カテゴリー3(風速で約50m/s)以上になると、大型ハリケーン(major hurricane)と呼ばれます。
サイクロンとは?
サイクロン(Cyclone)は英語で低気圧や暴風全般を表す総称的な言葉ですが、気象用語として使う場合は次の意味となります。
タイフーンとの違いは、同じく発生場所です。インドやオーストラリア付近で発生するとサイクロンとなります。
ただし、サイクロンの名前自体が熱帯低気圧の総称的な意味でもあるのと、WMOでは領域によって名称や表現も違ってくる(Cycloneそのものの名称は無い)ので、最大風速の基準については少し判断がややこしくなります。
世界気象機関(WMO)での基準は、領域(3つ)によって次のように分類されます。
国や報道機関などによって、解釈が異なることもありますが、
- 北インド洋では「Cyclonic storm」
- 南西インド洋、南太平洋および南東インド洋では「Tropical cyclone」
が一般的にサイクロンにあたります。
▼領域(3):北インド洋(ベンガル湾およびアラビア海を含む)
最大風速(knot) | 最大風速(m/s) | 国際分類の名前 |
---|---|---|
34~48knot | 17~25m/s | Cyclonic storm(サイクロンにあたる) |
48~64knot | 25~33m/s | Severe cyclonic storm |
64knot以上 | 33m/s以上 | Very severe cyclonic storm |
▼領域(4):南西インド洋
最大風速(knot) | 最大風速(m/s) | 国際分類の名前 |
---|---|---|
34~48knot | 17~25m/s | Moderate tropical storm |
48~64knot | 25~33m/s | Severe tropical storm |
64knot以上 | 33m/s以上 | Tropical cyclone(サイクロンにあたる) |
▼領域(5):南太平洋および南東インド洋
最大風速(knot) | 最大風速(m/s) | 国際分類の名前 |
---|---|---|
34~64knot | 17~33m/s | Tropical cyclone(サイクロンにあたる) |
64knot以上 | 33m/s以上 | Severe tropical cyclone |
サイクロンも、ハリケーンと同じく場所を移動することによって、タイフーン、ハリケーンとなることもあります。
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万が一に備えよう!
台風、タイフーンは熱帯低気圧がとても強くなったもので、強い雨風をもたらします。またハリケーンやサイクロンも、台風と同じように強い雨風をもたらす気象現象です。
台風は水害・風害・土砂崩れなど、思わぬ災害を引き起こすきっかけとなります。そのため天気予報や災害情報を確認し、水や食料の確保などの対策が必要となりますね。
台風が来ても安易に大丈夫だろうと思わずに、しっかりと最新情報を入手して「万が一」に備えるようにしましょう!
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