
日本語には、普段馴染みがないながらも、特定な場面や重要な局面で使われる言葉もあります。「下賜」もそんな言葉の1つですね。
下賜は「かし」と読みますが、他にも似たような言葉もあり、言い換えが可能なのかもどうかも気になるところ。
そこで、
- 下賜の意味
- 下賜の使い方・使われ方
- 下賜の類義語
- 下賜の対義語
…について順に紹介していきますので、この機会にぜひ覚えてくださいね!
下賜の意味とは?
高貴な方が物を与える

下賜は「かし」と読み、次の意味がある言葉です。
- 身分の高い人が、身分の低い人に物を与えること。
ここで言う「身分の高い人」とは、王族や貴族のことを指します。そして現代の日本では、皇族が一般市民に金品を渡す時に使われます。
社長が部下に物品を渡す時や、市町村長が住民に物品を渡すときには使わないので注意してくださいね。
下賜の使い方・使われ方
下賜を使う場面

- 我が家の家宝は、明治天皇より御下賜された銀時計だ。
かつては士官学校や帝国大学などで首席で卒業した者に対し、天皇より「銀の懐中時計」が与えられました。現在は廃止となっていますが、東大卒のエリートを指す言葉として「金時計組」という言葉も残っているほどなんですよ。
御下賜(ごかし)は、下賜をさらに丁寧にした表現です。より相手を敬う時に使いたいですね。
- この刀は織田信長が家臣への褒美として、下賜したものと伝わっている。
現在では皇族の行動に対して使われる「下賜」ですが、かつては武家の棟梁(とうりょう)にも使いました。
下賜品という場合
また下賜ではなく、「下賜品(かしひん)」と言う言葉が使わる事があります。
- 祖父は御下賜品として、菊の御紋入りの煙草を賜った事がある。
下賜品(御下賜品)は皇族から頂いた物品のことを指す言葉です。
先に紹介した例で言うと、銀時計が下賜品に当たりますが、他に有名なものに菊の御紋が印刷された煙草(紙巻きたばこ)があり、様々な関係者に下賜されてきました。
2006年(平成18年)の末以降、煙草は廃止され、代わりに菊の御紋入りの金平糖(こんぺいとう)が下賜されているんですよ。
下賜の類義語は?
恩賜
下賜と同様の意味がある言葉に、「恩賜(おんし)」があります。恩賜と言えば、東京の「上野恩賜公園」「恩賜上野動物園」は有名ですよね。
「恩賜」とは王様や君主が配下のものに対し、それまでの功労をねぎらって物品を与えることを指します。日本では天皇から贈られる(賜る)事と、贈られた物品に対して使われます。
実は東京の上野公園や上野動物園は、かつて宮内庁の管轄だった経緯があるんです。その後、東京市(現在の東京都)に譲り渡したことで、「恩賜」の名前が付くようになったんですね。
恵賜
金品に関わる言葉として、「恵賜(けいし)」があります。こちらは改まった場で目上の者が目下の者に、金品を渡す時に使われます。
贈呈
社長や市町村長などが、部下や住民に物品を渡すときは「贈呈(ぞうてい)」を使います。
贈呈には「人に物を差し上げる」という意味があり、渡す人・渡される人に身分の上下は関係ありません。そのため結婚式で両親に渡す「花束贈呈」など、親や先輩方に対しても使える言葉なんですよ。
下賜の対義語は?
献上

献上(けんじょう)とは、身分の低い者が身分の高い者へ物品を差し上げる時に使う言葉です。主に皇室や総理大臣・各種大臣、海外の大統領や王族に対して使われます。
またここから転じて得失点で争うスポーツで、失敗により相手に点数を与えてしまったときにも使われます。
「ピッチャーの暴投により、相手チームに3点を献上してしまった」
といった言い方をするんですよ。
頂戴
頂戴(ちょうだい)には、「頭上に物をいただき、ささげること」という意味があります。そこから変化して、物品を頂く時にへりくだった表現として使うようになりました。
ただし「飲食物をもらって、食べたり飲んだりする」という意味で、「頂戴する・頂戴した」と使うことがあります。さらには「○○してちょうだい」と、相手に何かをしてほしい時の命令形としても使う言葉です。
音だけではどの意味なのか判断しづらいため、使うときには注意が必要ですね。
新たな時代に
普段の生活では聞き慣れない「下賜(かし)」という言葉ですが、意外な場面で見聞きすることがあります。例えば天災による被害を受けた地域に対し、皇室から物品が下賜されることがあるんですよ。
また由緒正しい家柄の方でしたら、昔ご先祖様が皇室、あるいは将軍より下賜された品が家宝になっているかも知れませんね。
2019年は新たな天候陛下が即位される年ということもあり、聞きなれない言葉が使われる場面も増えてきます。「下賜」という言葉も登場するかも知れませんので、この機会に覚えておきたいですね!
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