□曼珠沙華(彼岸花) 巾着田
秋に赤い花が咲く彼岸花(ヒガンバナ)は、群生地が観光名所になるほど美しいものです。また田んぼのあぜ道に植えられている事もあり、身近な花の一つかもしれませんね。
そんな彼岸花ですが、実は毒があることを知ってましたか?一方で「彼岸花を食べた」という話もあり、その点も気になりませんか?
そこで、
- 彼岸花の毒とは?
- 彼岸花の中毒の症状は?
- 彼岸花は食用・薬用になるのか
- 彼岸花の毒の抜き方
…を紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね!
彼岸花の毒とは?
彼岸花は全草有毒の植物

彼岸花は曼珠沙華(まんじゅしゃげ)とも呼ばれる植物で、独得の形をした赤い花を咲かせます。ちょうど開花時期が9月のお彼岸の頃となるため、この名前がつきました。
美しい花を咲かせる彼岸花ですが、実は毒を持つ植物としても知られています。
その毒は花・葉・茎・根など、彼岸花全部に及ぶもの(全草有毒といいます)。
特に根本にある、球根の一種である「鱗茎(りんけい)」という部分に一番多く毒が集まっているんです。
どんな毒なの?
彼岸花には、リコリンやガラタミンなどのアルカロイド系の毒が20種類ほど含まれています。アルカロイド系の毒は様々な植物が持っていることがあり、また一部のカエルが持っていることも。
また古くから知られた毒でもあり、メソポタミア文明においてもこの毒の知識があったと言われています。
ちなみに、あぜ道に彼岸花が植えられているのは、彼岸花の毒が害虫除けになると考えられたから。実際ミミズやモグラは彼岸花のある場所を避ける傾向があるため、一定の効果があったんですね。
彼岸花の毒は危険!?中毒の症状は?
彼岸花の毒ではこんな症状が

彼岸花(曼珠沙華)の毒による中毒では、次のような症状があらわれます。
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- めまい
- 流涎(りゅうぜん)
- 発汗
- 中枢神経の麻痺
- 呼吸困難
30分以内の短い潜伏期間の後に、吐き気・嘔吐・下痢などの症状が出ることが多いですが、中枢神経の麻痺や呼吸困難といった重篤な症状になることもあります。
・・とは言え、彼岸花は、触っただけで上記にあげた症状がでるような危険な花ではありません。
症状があらわれる可能性があるのは、彼岸花を口にした場合です。また致死量に関しても、彼岸花に含まれるリコリン10g程度を摂取した場合となります。
毒が多く含まれる鱗茎(りんけい)でも、その量は0.15g程度なので、意図的に毒抜きしないで食べたりしない限りは大丈夫。
ですが、子供さんや犬などのペットがつい口にすることもあるため、彼岸花には近づかないほうが安心です。また彼岸花に触った後はすぐに手を洗い、うっかり口にしないように十分注意してくださいね。
もし上記症状が出ていて心当たりがある場合は、すぐに病院で治療を受けるようにしましょう。
彼岸花は食用・薬用になるの?
非常食として食べられていたことも
毒を多く含む彼岸花の鱗茎(りんけい)ですが、この部分はデンプンが含まれています。そのため農作物がとれなかったときの非常食として、食べられていた歴史があるんです。
もちろんそのまま食べれば毒に当たるため、毒抜きをしてからデンプンを食べていました。戦時中にも毒抜きをして食べた記録もあり、食糧不足の危機を救ってきたんですね。

少量なら薬として利用されている
彼岸花に含まれる成分には、記憶を回復させる作用があるとの研究成果が。そのため「アルツハイマーの薬」にも、彼岸花の成分が利用されているんです。
また毒の成分の中には、少量ならば「薬」になるものもあります。そのためか、彼岸花の鱗茎は、石蒜(せきさん)という薬として使われていたことがあります。
その効能は利尿作用や消炎作用で、すりつぶしたものを患部に塗るというもの。ただし彼岸花の毒はそのままのため、素人が使うと非常に危険です。
彼岸花の毒抜き方法は?
水を使って毒抜き
彼岸花の毒は水溶性なので、長時間水にさらすことで鱗茎を食べることができます。
普段はあえて食べる必要がありませんが、万が一のときに備えて彼岸花の毒抜き方法を紹介します。
□彼岸花の毒抜き方法
- 作業を行う前に、ゴム手袋を装着する。
- 鱗茎の外側の皮を取り除く。
- おろし金などを使って、しっかりとすりつぶす。
- 何度もていねいに水にさらして、しっかり洗う。
- 7回以上水を交換して水にさらしてから、新しい水を使って鍋で煮込む。
- 天日干しにしてしっかり乾燥させてから、粉末状にして完成。
ここでのポイントはしっかり水で洗って、毒を抜き去ること。最低でも7回は行い、その後しっかり煮込んでから天日干しにしましょう。
こうすることで毒が抜け、鱗茎に含まれるデンプンが食べられるようになります。昔の人はこのデンプンを水で丸めて「お団子」にし、焼いて食べたそうですよ。

きれいな花には毒が・・・
最近では彼岸花の群生地が観光名所となり、多くの人でにぎわっています。特に「巾着田の曼珠沙華まつり」は有名ですね。
【参考記事】
彼岸花がきれい!巾着田曼珠沙華まつりの日程や見頃は?
鮮やかな赤い花が咲く彼岸花はきれいですが、花にも草にも毒が含まれています。触っただけでは中毒症状は出ませんが、口に入ると吐き気などの症状がでることもあります。
切り花がほしい場合などは汁に注意して、触ったらすぐ手を洗うことを心がけましょう。
美しい彼岸花のことをよく知って、注意深くも、鮮やかできれいな花を楽しみたいですね。
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