児の健やかな成長を願う端午の節句には、菖蒲の花を飾ったり菖蒲湯に入る風習があります。邪気を払うと言われる「菖蒲」ですが、「花菖蒲」とは実は違う種類の植物なんですね。

また、花菖蒲は「あやめ」「かきつばた」と間違えられやすい花でもあります。

「いずれ あやめか かきつばた」と言われるように、そっくりな花を咲かせるのが、「あやめ」と「かきつばた」。花菖蒲も含めて、花の違いはぜひ覚えておきたいですね。

そんな似ている、菖蒲・花菖蒲・あやめ・かきつばたの違いや見分け方について紹介します。ぜひ参考にしてくださいね!

菖蒲・花菖蒲・あやめ・かきつばた、それぞれの特徴

菖蒲とは?

菖蒲(ショウブ)は、ショウブ科ショウブ属(古くはサトイモ科)に属する植物。刀のような細長く鋭い葉を持ち、爽やかな香りが邪気を払うという言い伝えがあります。

また名前の「しょうぶ」が、

  • 勝負
  • 尚武(武勇を重んじること)

につながるという考えもあります。

そのため、男の子にとって縁起の良い植物となり、端午の節句の菖蒲湯に用いられるようになりました。

その一方で菖蒲の花は木緑色でとても小さく、一見すると花に見えないもの。5月頃に開花するのですが、ほとんど注目を集めることがないんですね。

花菖蒲とは?

菖蒲の花が一見すると花に見えない、という説明はなんだかおかしいですよね?

実は私達が「菖蒲の花」と呼んでいるものは、菖蒲とは違う品種の「花菖蒲」菖蒲と花菖蒲は全く別物なんですね。

花菖蒲

花菖蒲(ハナショウブ)はアヤメ科アヤメ属の多年草で、背丈が80cm~100cmほどに成長する植物です。

花は青、紫、ピンク、白、黄と多彩ですが、いずれも花弁の付け根が黄色い特徴があります。開花時期は6月上旬~下旬で、やや湿った土地できれいな花を咲かせます。

また、葉は細長く、中央に筋のような「葉脈」が見える特徴があります。葉に香りはなく菖蒲湯には使えないので、その点は注意してくださいね。

□明治神宮御苑 花菖蒲が最盛期に
https://youtu.be/SWr7ZE1aYsQ

*明治神宮御苑は、花菖蒲の名所の一つなんですよ。

あやめとは?

あやめ

あやめはアヤメ科アヤメ属の多年草で、背丈が50~60cmほどに成長する植物。花は紫色ですがまれに白いものがあり、外側の花弁の中心に網目状の模様が入ります

開花時期は5月上旬で、乾燥した土地を好む特徴もあります。葉は細長く尖っていますが、筋のような「葉脈」はありません。

あやめは漢字で、「菖蒲」または「文目」と書きます。

ショウブの「菖蒲」と同じ漢字を使うので混合しがちですが、これは花菖蒲を「あやめ」と呼ぶことがあったからです。

「菖蒲」でも間違いではないですが、「文目」のほうが正しく伝わるので、漢字はこちらが無難ですね。

□約42万本のアヤメの花が咲く「あやめ園」 宮崎県都城市早水公園
https://youtu.be/9gH7gwrdImU

*あやめの名所も全国各地にあり、私達の目を楽しませてくれます。

かきつばたとは?

かきつばた

かきつばたは「杜若」と書く、アヤメ科アヤメ属の植物。背丈は50cm~70cmほどに成長し、湿地帯を好む特徴があります。

開花時期は5月中旬~下旬で、花はやや濃い目の紫色。外側の花弁の中心部に白く細長い筋が入り、そのコントラストがとても美しいんですよ。

葉は細長いですがやや幅が広く、筋のような「葉脈」は目立ちません。

□史跡八橋かきつばたまつり満開 (愛知県知立市無量寿寺カキツバタ園)
https://youtu.be/Er4NVod2f38

*こちらが、かきつばた(杜若)です。

花の色が濃くて美しいですね。

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花菖蒲・あやめ・かきつばたの違いや見分け方

背丈の違いは

花菖蒲・あやめ・かきつばたの違いですが、まずは咲いている土地に注目しましょう。

その土地が湿地帯・水辺であれば、「花菖蒲」または「かきつばた」。

その中でも、

  • 背丈が自分の腰ぐらいまであれば「花菖蒲」
  • 背丈がそこまで大きくなければ「かきつばた」

となります。

そして、乾燥した畑または整備された花壇で咲いているなら、「花菖蒲」か「あやめ」のどちらかです。

その中でも、

  • 腰ぐらいまでの背丈があれば「花菖蒲」
  • 膝ぐらいまでの小さい背丈なら「あやめ」

となります。

開花時期と花の違いは

開花時期花の形で見分ける場合、次の点が参考になります。

  • 6月上旬に紫やそれ以外の様々な色の花が咲き、花の根本が黄色いのが「花菖蒲」
  • 5月上旬に主に紫の花が咲き、外側の花弁に網状の模様があるのが「あやめ」
  • 5月中旬~下旬に濃い紫の花が咲き、外側の花弁の中心部に白い筋があれば「かきつばた」

違いをまとめると・・・

花菖蒲など

最後に、花菖蒲・あやめ・かきつばた、それぞれの特徴と見分け方を、簡単にまとめました。

*ここでのショウブは、ショウブ科の菖蒲ではなく、アヤメ科の花菖蒲です。

種別はなしょうぶあやめかきつばた
漢字花菖蒲菖蒲・文目杜若
分類アヤメ科アヤメ属アヤメ科アヤメ属アヤメ科アヤメ属
開花時期6月頃5月上旬~中旬5月中旬~下旬
咲くところ湿地帯・水辺、乾燥地にも咲く乾燥した畑・花壇湿地帯・水辺
背丈80cm~100cm(腰くらいの高さ)50cm~60cm(膝ぐらいの高さ)50cm~70cm(膝ぐらいの高さ)
花の色紫やそれ以外の様々な色主に紫、白もやや濃い目の紫
その他特徴花の根本が黄色。葉は細長く中央に筋のような「葉脈」がある。外側の花弁に網状の模様がある。葉は細長く尖っている。外側の花弁の中心部に白い筋がある。

いずれも美しい花を咲かせる

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「花菖蒲」と「あやめ」と「かきつばた」は、見た目と開花時期が似ていることから区別しにくい花。特に「あやめ」と「かきつばた」はそっくりで、ことわざでも例えられてしまうほどです。

しかし花が好む土地や、背丈、花びらの特徴などを覚えておけば、見分けるのは意外と簡単。そして菖蒲に関しては、菖蒲湯に使う菖蒲と、花を飾る花菖蒲は別の品種であることも覚えたいですね。

花菖蒲・あやめ・かきつばた、いずれも美しい花を咲かせるので、5月~6月にたっぷり楽しみましょう!