生時代に学んだ古文は、大人になってから読み返しても心にしみる一節が数多くあります。一方で現代とは違う言葉使いも多いため、意味を思い出すのも大変ですよね。

そういった言葉の一つに、「いとおかし」(いとをかし)があります。

古い言葉とは言え、今でも日常で時々耳にする言葉ですね。ですが、その「いとおかし」の意味を答えることが出来ますか?

そこで、
・いとおかしの「いと」の意味
・「いとおかし」の意味
・「おかし」と「をかし」の違い

についてご紹介しますので、復習も兼ねてぜひ覚えてくださいね!

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「いと」の意味は?

「とても」と「それほど」

「いとおかし」という言葉は、

  • 「いと」
  • 「おかし」

に分けることができます。

「いと」は副詞にあたり、次のような意味があります。

  1. 非常に、とても、大変、実に、誠に
  2. それほどでも、たいして
    (打ち消す言葉を付け加えた上で)

前者(1番)の意味は、主に「いとおかし」で使われるもの。「おかし」に対して「とても・すごく」と、「おかし」の意味を広げる為に使われます。

後者(2番)の意味に関しては、打ち消す言葉を加えることで「それほどでもない」という表現になります。

「いと」の例

例えば「源氏物語」の一番最初の章「桐壷」に、次の文章があります。

いとやんごとなき際にはあらぬがすぐれて時めき給ふありけり。

現代語にすると、次のようになります。

それほど高貴でない身分の方で、特に帝の寵愛を受ける女性がおりました。

ここでの「いと」は、「いとやんごとなき」の部分。打ち消す言葉は「際にはあらぬが」の、「あらぬが」の部分。

「それほど高貴な方ではない」と、女性の身分が低いということを表しているんですね。

このように「いと」には2つの意味があるので、続く言葉に注意して意味を確認しましょう。

いとおかし(いとをかし)の意味は?

様々な意味が

「いとおかし」の「おかし」には、次の意味があります。

  • 趣(おもむき)がある。
  • 愛らしい。
  • おもしろい。
  • 風情がある。
  • 興味がある。

「いとおかし」には様々な意味がありますが、これは前後の文章によってニュアンスが変わるもの。

例えば「枕草子」の中で登場する「いとおかし」には、次の一文があります。

秋は夕暮れ。

(~中略~)

まいて雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし

これは「春はあけぼの」で始まる、最も有名な一文の秋の例え。現代語にすると、次のような意味になります。

秋は夕暮れがよい。

(~中略~)

ましてや雁などが隊列を組んで飛ぶ様子が、とても小さく見えるのは趣があってよい。

また枕草子には、次の一文が。

二つ三つばかりなるちごの、急ぎて這ひ(はい)くる道に、いと小さき塵(ちり)のありけるを、目ざとに見つけて、いとをかしげ(おかしげ)なる指(および)にとらへて、大人ごとに見せたる、いとうつくし。

こちらは現代語にすると、次のような意味に。

「ニ・三歳ぐらいの幼児が、急いで這い寄ってくる途中に、とても小さいゴミがあったのを目ざとく見つけ、それをとても可愛らしい指でつまみ、大人に見せている様子は、とてもかわいらしい。」

  • 前者ですと、渡り鳥が隊列を組み、それが小さく見えていく様子がしみじみと感じる
  • 後者ですと、ゴミを拾う子供の小さな指が、とても可愛らしい

と「いとおかし」を使って表しています。

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いとおかしは便利

「いとおかし」が多く使われたのは、平安時代から鎌倉時代にかけて。枕草子の他にも、「更級日記」「徒然草」などの随筆にも「いとおかし」は登場します。

また「いと」をつけず、「おかし」のみの表現も多くの文学に登場しています。

このように様々な意味があり、多く使われる「いとおかし」は便利な言葉なんですね。

「おかし」と「をかし」の違いは?

「いとおかし」の文例をみると、「いとおかし」ではなく、「いとかし」となっていますよね?

実は「いとおかし」は、「いとをかし」を現代語仮名遣いにしたもの。そのため正しい表記をするならば、「いとをかし」と「を」を使うのが正しいということですね。

感じる気持ちは同じ

いとおかし(いとをかし)は古文でよく見かける言葉で、その意味は様々。

  • とても趣がある
  • とてもかわいらしい
  • 風情がある

…など、前後の文章に合わせて使い分けられます。

その使われ方は、今風の若者言葉で言えば
「マジ最高!」
「マジヤバイ!」
に近いものとも言えるかもしれませんね。

そう考えると難しい古文も、なんだか身近に感じられませんか?

「いとおかし(いとをかし)」という言葉を通じて、遠い先祖の気持ちの揺れ動きをのぞいてみませんか?