
豪華な建築物や磨かれた芸術品を見ると、美しく素晴らしいと思いますよね。その一方で、静寂さに包まれた庭園や茶器などを見ると、また違った美しさを感じます。
このような美しさの表現として用いられるのが、「わびさび」(侘び・寂び)という言葉。日本人ならではの独特な表現方法とも言えますが、どういう時に使う言葉なのか知っていますか?
わびさびの意味や言葉の使い方について紹介しますので、ぜひ覚えてくださいね!
わびさびとは?その意味は?
「わび」と「さび」

わびさびとは美意識の一つで、質素であり静寂につつまれた物事・空間などに対して使用します。
わびさびは、海外、特に西洋にはあまりない美意識。日本の美意識・芸術観を表すものとして評価されています。
そのため海外で紹介される場合も、英訳せずに「Wabi, Sabi」として紹介されているんです。
「わびさび」という言葉はまとめて使いがちですが、実は
- 「わび」
- 「さび」
という2つの言葉をまとめたもの。
それぞれ意味が異なりますが、現代では一つにまとめて表現することが多いんですね。
「わび」とは
わびさびのうちの「わび」とは、どういう言葉なのでしょうか。
わびは漢字で「詫び」と書き、動詞の「詫ぶ(わぶ)」が名詞となったもの。
元々は
- 気落ちする
- 悲嘆
- 鬱々とする
といった、内面の落ち込みを表現する言葉でした。
否定的な表現だった「わび」が美意識の表現となったのは、戦国時代に発展した茶道にあります。
戦国時代の有力武将が開催する茶会では、豪華さと規模の大きさが競われるようになっていました。
その一方で不必要なものを取り除き、不自由なぐらいのこじんまりとした茶会も開催されていたんですね。そんな茶会が、不自由な状況を肯定し、静かな佇まいを楽しむ「侘び茶」として発展していきました。
お金をかけた豪華で何不自由しない状況ではなく、質素な不自由さを味わい深く楽しむ。
これが「詫び」という言葉に含まれる、美意識や意味なんです。
「さび」とは
一方の「さび」は漢字で「寂び(然び)」と書き、動詞の「さぶ」が名詞となったものです。
元々は時間の経過によって、物事が劣化し朽ちていく様子を表す言葉です。また誰もいなくなって静かであるという意味として、「寂れる」という表現にも使われてきました。
茶道などで「わび」として不自由な状況を楽しむようになると、使用する茶器などにも変化がうまれます。きれいな状態が保たれたものよりも、使い込んで変化が出たものを美しいとする考え方となりました。
物事が朽ちて寂しくなっていく様子に対し、変化していく事を美しいと感じること。あるいは時間の経過によってあらわれた劣化や変化を、味わいのある美しさだと意識すること。
このような物事の感じ方を、「寂び」という美意識として表現されるようになったんですね。
わびさびはどんな時に使う?
茶道にて、静かで素朴なひとときを
わびさびを感じたいのであれば、茶室で行われるお茶会に参加するのはいかがでしょうか。
茶室はおよそ四畳半程度の広さで、主人が茶を点てお客をもてなす空間。日本庭園の一角に作られることが多く、庭を眺めながら茶室に行くところから茶会が始まっています。
- 庭で季節の移り変わりを楽しみ、しっとりとした、しつらえの茶室でゆったりと時を過ごす。
- 使われる茶器も使い込まれた味わい深いものを用意し、主人のもてなしをゆったりと楽しみます。
賑やかな音楽もなくきらびやかな装飾もありませんが、これこそが「わびさび」を感じる瞬間。目新しいものに溢れた現代だからこそ、静かで素朴なひとときを味わいたいですね。

散っていく桜に「わびさび」が…
自然に目を向けると、桜の開花から散っていくまでの様子にもわびさびがあらわれています。
桜の花は周囲の色を染め上げるほど美しいですが、一方で雨風に晒されるとすぐに散ってしまう性質があります。またぱっと咲いてさっと花を散らす事もあり、同じ状態を長く楽しむには向いていない花と言えます。
この「開花時期は長くなく、雨風ですぐ散ってしまう」というところが、朽ちていく「わびさび」として美しく感じられます。
桜と同様に秋になると楽しめる紅葉も、時期がすぎれば葉が落ちて木々の枝だけに。
- 紅葉の美しさと葉が落ちたあとの静寂さに「さび」を
- 残された木々の佇まいに「わび」を
感じるんですよ。
朽ちていくことへの美しさ
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わびさびは日本独自の美意識とも言われ、静けさや変化する物事に美しさを見出す考え方。四季の移り変わりのなかで咲いては散っていく花々や、木々の成長を楽しむのもわびさびと言えます。
また、素朴な作りの茶室や庭園に対し、静けさの中に侘しさと美しさを見出すのもわびさび。難しい理屈は抜きにして、静けさや佇まいを体全体で味わうと、きっと良さが見つかりますよ。
賑やかな日常から少し離れ、心を研ぎ澄ましてわびさびを味わいませんか?
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