霧の都とも呼ばれているロンドン。映画などで霧に濡れるシーンを見るととても素敵に感じられますね。そんなイメージとは別に、朝夕の通勤時などに霧(きり)がかかると、衣服が濡れたり視界がぼやけて迷惑なものです。
また霧と似たようなものに、靄(もや)や霞(かすみ)がありますが、どれも字が似ていてややこしいですね。一体、霧とはどう違うのでしょうか?
幻想的で素敵な光景を作り出す一方で迷惑な時もある、霧(きり)や靄(もや)や霞(かすみ)。この3つの特徴や違いについてまとめてみました。
霧(きり)とは
水蒸気が限界を超えて
霧(きり)とは空気中の水蒸気が様々な理由で、空気中に水滴として発生した状態のことを言います。
空気中には水蒸気の状態で水分が存在し、その割合は湿度計で計測することが可能です。しかし急激に水分が増えるなどして、湿度が100%近くになると水蒸気は細かい水滴の状態になります。
霧の中を歩くと髪や衣服がしっとりするのは、細かな水滴が付着するからなんですよ。
雲と霧は同じもの
実は霧と同じ現象が、空に浮かぶ雲でも起きています。
雲の正体は細かな水滴の集合体で、その原理は霧の発生原理と同じ。そのため飛行機が雲の中に突入すると、霧のように周囲がかすんで見えるんですよ。
また地上で発生した霧を高い場所から見ると、まるで雲のように見えます。逆に山にかかった雲は、その場所に行くと雲ではなく霧の状態だと実感することができるはずです。
気象上の定義では
日本の気象(天気予報)における霧は、次のように定義しています。
・微小な浮遊水滴により視程が1km未満の状態
※視程とは、水平方向での見通せる距離のこと
そのため視程が1km以上ある場合は、霧が発生していても霧と言いません。また地上での視界が約100m以下、海上で500m以下になると「濃霧」と表現されます。
この状態で交通などに影響が出る恐れがあると判断されると、「濃霧注意報」が発令されるんですよ。
□釧路の哀愁~霧笛最後の仕事の日
https://youtu.be/I9ObePeNw98
*日本では北海道・釧路市が、霧の多い街として有名ですね。
靄(もや)とは
霧より薄い
靄(もや)は霧と同じもので、空気中の水蒸気が細かな水滴になった状態の事を指します。
霧との違いは視界が比較的良いかどうか。靄(もや)は霧(きれい)よりも視界が良く、濃度が薄い状態の事を指します。
そのため霧が薄れてきた時に、霧から靄に変わったと使われます。
靄の気象上の定義は
また気象上では、靄は次のように区別されます。
・微量な水滴が発生しているときに、視程が1km以上10km未満の状態のとき
ただし天気予報では、霧の発生は伝えることがありますが、靄について伝えることはほとんどありません。
そのため靄が発生後に視程が1km未満になった時点で、「霧が発生しています」と伝える形となります。
霞(かすみ)とは
状態を表す言葉
霞(かすみ)とは、周囲の景色がぼやけた状態を指す言葉です。ぼやけている原因は霧や靄以外にも、黄砂や煙であっても「霞」と表現されることがあります。
そのため霞(かすみ)は、霧や靄と違い、気象を表す言葉としては使われません。気象においても霞は定義されていないため、使用しないことになっています。
季語として
天気予報では使われない霞(かすみ)ですが、文学表現の上ではよく使われる言葉です。
古代中国では夜明けの霧がかかった状態に、朝日が照らさされる事を「朝霞」と表現していました。また朝焼けや夕焼けで赤く染まった霧や雲も、霞(かすみ)と表現したという記録も残されています。
こういった表現が日本に渡り、時間を問わずぼやけた視界の状態として「霞」という表現が定着するようになったんですね。やがて和歌や俳句などの文学表現として、霞が度々登場するようになりました。
特に俳句の世界では、春の季語として霞は使われています。たしかに春先の夜明け頃は、視界もややぼんやりとしてますからね。
一方で秋の季語には「霧(きり)」があり、同じくぼんやりとした視界に対して使用されます。しかし「霞(かすみ)」は季語としては用いられないため、仲間はずれのようにも感じられますね。
霧と靄と霞、それぞれの違いのまとめ
最後に、霧と靄と霞、それぞれの特徴や違いを簡単にまとめてみました。
■霧(きり)
- 空気中の水蒸気が飽和状態になり、細かな水滴となった状態
- 雲も同じ原理で発生し、空の上か地上かの違いで区分されている
- 気象上では、水滴の発生により視程が1km未満の状態を表す
- 地上での視程が約100m以下、海上で500m以下になると濃霧と表現される
- 俳句では秋の季語として、ぼやけた状態を指す言葉として使われる
■靄(もや)
- 霧と同じものになるが、霧よりも視界が良い時を指す
- 気象上では、水滴が発生により視程が1km以上10km未満となった状態を指す
■霞(かすみ)
- 霧や靄、煙や黄砂などで周囲がぼやけた状態を指す
- 気象用語ではないため、天気予報では使われない
- 俳句では春の季語として、ぼやけた状態を指す言葉として使われる
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視界で区別!
霧と靄と霞は、漢字の見た目が似ていることから間違えやすい言葉ですね。
霧(きり)と靄(もや)は意味の上では同じものと言えますし、霞(かすみ)も、実は霧や靄の状態のことを表しているというわけです。
それぞれを簡単に区別する上では、
- 視界がきかないときが、霧(きり)
- ある程度見えるときが、靄(もや)
- 気象用語ではなく状態を伝えるための表現が、霞(かすみ)
として使う・・と覚えておきましょう。
少しややこしい部分もありますが、視界(視程)で違うことを覚えて活用したいですね!
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